運動前の「静的なストレッチ」
ゆっくりと筋を伸ばしていく「静的なストレッチ」は、より素晴らしいアスリートの体づくりにはつながるかもしれませんが、筋肉の炎症や怪我を防ぐには役立たない可能性があります。
なぜなら、多くの研究によって、運動前に静的ストレッチを行うと、運動の少なくとも一部でパフォーマンスが低下することが分かってきたのです。
筋肉痛のナゾのように、その理由については完全には解明できていませんが、研究者らは下記のようにいくつかの推測をしています。
ある専門家は、筋肉の長さの変化に反応する受容器が、ストレッチの後に、反応が鈍くなることと関係しているといいます。
これは、筋繊維がすぐに働くように補強されないことを意味します。
たとえば、重いダンベルを持ち上げている場合、できるだけ早く多くの筋繊維を活性化させたいのに、反応が低下したことによって、思ったような力が発揮できなくなってしまうのです。
その他にも、筋肉と腱がつながっている部位(筋腱接合部と呼ばれる)の領域が、ストレッチ後に少しゆるむためではないかと考えている研究者もいます。
それは、筋肉から骨格にエネルギーが伝わりにくくなり、速く走れなくなったり、ジャンプ力が低下したりして、運動のパフォーマンスが落ちることを意味します。
結論
運動の前には、血流を促進し、筋肉を温める必要があるので、筋肉の動きを長い時間停止させる静的なストレッチは適しません。
かわりに、筋肉をゆっくりと動かしながら伸ばすダイナミックなウォーミングアップを取り入れて、筋肉の温度を上げた方がよいでしょう。
ダイナミックなウォーミングアップにおける大きなメリットは、身体の筋肉が温められたことによってもたらされます。
筋肉の温度が上昇すると、神経の信号伝達や酸素の取り込み、筋収縮などが速くなり、多くの筋繊維の反応が活性化されるためです。
基本的に、あなたの目標が、より柔軟になりたいのであれば、静的なストレッチは役立つでしょう。体がやわらかくなれば、それだけ関節の可動域も広がり、アスリートとしての能力アップにもつながるかもしれません。
しかし、運動効果を上げたいのであれば、運動前には、ダイナミックな動きを取り入れたウォーミングアップがよいと言えます!